相続した空き家を売却した際の税制優遇措置が適用しやすくなりました
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の拡充・延長(平成31年度税制改正案)
制度の概要
・被相続人居住用家屋を相続した相続人が
・相続日から起算して3年を経過する日の年の12月31日までに
・その家屋(耐震性のない場合は耐震リフォームをしたものに限り、その敷地を含む。)又はその家屋取壊し後の敷地を譲渡した場合には、
・その家屋又は敷地の譲渡所得から3,000万円を控除することができる
適用を受けるためのポイント
その1…適用期間
相続日から起算して3年を経過する日の年の12月31日までに譲渡したものが適用対象となります。
令和元年度税制改正により、この特例の適用期間が4年(令和5年12月31日まで)延長されました。それまでに譲渡しなければ適用を受けることはできません。
その2…被相続人居住用家屋とは
被相続人の居住の用に供していた家屋で、以下の3つの要件の全てにあてはまるものに限ります。
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有建物登記がされている建物(分譲マンション等)でないこと
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
令和元年度税制改正により、特定事由により、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった家屋(特定事由により居住の用に供されなくなる直前に被相続人の居住の用に供されていたもの)も対象となり、要件が緩和されました。
特定事由とは、老人ホーム等への入所等ですが、具体的には次の事由が該当します。
⑴ 要介護認定等を受けていた被相続人が、①養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム等、②介護老人保健施設、介護医療院、③サービス付き高齢者向け住宅、に入居又は入所をしていたこと。
⑵障害支援区分の認定を受けていた被相続人が、障害者支援施設(施設入所支援が行われるものに限ります。)又は共同生活援助を行う住居に入所又は入居をしていたこと。
これにより、被相続人が老人ホーム等に入所をしていた場合の入所直前に居住の用に供していた家屋も適用対象に追加されました。
その3…特例の適用対象となる譲渡
ケース1(土地だけでなく家屋も又は家屋だけをリフォームして譲渡したい)
・相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋(注1)だけを譲渡
・相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋(注1)とその敷地等(注2)を譲渡
ケース2(家屋は古いので更地にして土地だけを譲渡したい)
・相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊しをして被相続人居住 用家屋の敷地等(注2)を譲渡
(注1) 譲渡する家屋に耐震性がない場合には、耐震リフォームをして一定の耐震基準を満たす必要があります。
(注2) 譲渡する敷地等は、相続の時から譲渡の時又は取壊し時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていないことが必要です。(ケース2ではさらに取壊し時から譲渡時まで建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないことも必要です。)
その4…売却代金が1億円以下であること
この特例は、売却代金が1億円以下の譲渡に限ります。
分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合は、この特例の適用を受ける売却日から3年後の12月31日までの売却も含めた売却代金の合計額で1億円以下かどうかを判定します。
その5…他の特例との関係
この特例は、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続により取得した土地、建物等を相続税の申告期限から3年以内に売却した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡所得の取得費に加算することができる特例:措置法39条)との選択適用のため、いずれか一方の特例しか適用できません。
なお、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除の特例(措置法35条)、居住用財産の買い換え等の特例(措置法36条の2他)、住宅借入金等の特別控除(措置法41条)との併用は可能です。
特例の適用を受けるための手続き
特別控除は多額この特例の適用を受けるためには、当然、確定申告をすることが必要ですが、適用対象となる譲渡であることを証明するための各種書類の提出が必要です。
一般的には、専門知識のない方ができる手続きではありませんので、詳細は税理士にご相談ください。
上手に節税するために
上記のとおり、この特例は最大3,000万円の譲渡利益が課税されないという大きなメリットがありますが、そのためには家屋を耐震リフォームするか取壊す必要があり、そのためのコスト(資金)も生ずるというデメリットもあります。
また、相続のしかたで、例えば、兄が家屋を弟がその敷地を相続した場合は、両者ともこの特例を適用することができなくなります。
このように、どのように相続するかも含めて検討することで、適用可能な特例を利用した上手な節税が可能となります。
相続の段階から、早めに専門的知識を持った税理士に相談することをお勧めします。
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